桐島、部活やめるってよ

いやぁ、おもしろかった。
繰り返される金曜日。縦糸横糸色とりどりの糸が織り込まれていきながら物語が編み出される感じがよかった。興味をずっと持続できました。
持つものも持たざるものも当人たちなりに同調圧力ヒエラルキーの上下やなんやかやに巻き込まれ煩悶している様が濃淡の差はあれどおしなべて描かれていて愛が感じられた。そして持つものも持たざるものもみんな観ている自分の中にある要素を露見させるので、自分が許されているような気になる。

「謝れよ!俺達に謝れよ!」なんて言える前田(神木隆之介)は強いよ。とても強い。映画監督になれるなんて甘い夢は見てなくて、でも今やっていることが素敵な幻想と地続きなんじゃないかっていう希望を持って信念のもとにやっている。
自分の信念を決められるってことはとても運がいい。
この物語に僕の分身はいなかったけど
「戦おう、僕達はこの世界で生きていかなければならないのだから。」
結局僕らはこの世界で生きていくしかないんだな。そしてその世界は自分で規定することができる。
「だから結局、出来る奴は何でも出来るし、出来ない奴は何にも出来ないってだけの話だろ。」
「お前それは持ってる奴が言うことだぜ」
戦える強さがある人間ばかりじゃない。
「なんとかしようとしてこの程度なんだよ!」
もがいている様さえ美しいのは若さのせいかな?

エンドロールで自分の通っていた高校の名前が出てきて「(・・?)」と思ったのですが原作の朝井リョウさんが同じ高校出身でした。そんなちょっとしたことでも「これは俺の映画だ」感が出てきますね。

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
朝井 リョウ
集英社 (2012-04-20)
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