老人と海
ページを繰る間ずっと潮風に晒されネチャネチャとしたものを手や顔にまとっているような感覚にとらわれる。行間に充満する荒涼感と瑞々しさがよかった。
老漁夫サンチャゴの大魚との格闘のモチベーションはロマンチシズムなのではないだろうか。ほぼ飲まず食わずで格闘して得た獲物も港に戻ったときにほぼ跡形がなくなっている。そんな事実から来る徒労感もロマンというフィルタでなんだかむしろ箔がついたかのようだ。ロマンだけで人は生きて行けるのかもしれない。ロマンとは自分なりの美学というふうに言い換えられるだろう。自分なりの美学を確立できるようになれるだろうか。不惑までにはそうなりたいものだな。
「売っているところがあったら、運ってものもちっとは買っときたいもんだな」
老人と海(新潮文庫)P107
まさにそうだね。ロマンがあるとは言えないかもしれないけれど。