インターネット、インターネット2 -- 次世代への扉 --

ミスター・インターネットこと村井純氏の著述。最近だと『小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記 ――インターネットやサーバのしくみが楽しくわかる』で監修もされていましたね。
新書ということで平易な言葉遣い(ただし多少厳密性に欠ける。「ウェブページ」ではなく「HP」など)も多々見受けられましたが、それが読み手をすんなり文章に引きこんでくれることと思います。というか、むしろ、この姿勢こそがインターネットの黎明から現在の発展における重要な要素だったことを文章自体が体現してくれていると言っても良いのではないかと思いました。
つまるところ「原理主義より現実主義」。現実主義は現場主義としてもよいかもしれません。原理的な正しさより現場的な正しさを優先する。本来referrerであるべきなのに通用しているのはrefererであることの哲学がここに見て取れますね。
研究者同士のつながりを実現するのが最初の目的であったインターネットが「系」を広げ、キャズムを越えてインフラとなっていくのを同時代的に体験できたのは自分自身とてもラッキーだなと思います。そしてインターネットというツールが社会や人間の様々な面を顕在化させる様を観察できることに興奮を覚えます。
重い石を動かすのは大変です。しかし動き出してしまえば意外とゆるゆると進むもの。黎明期、インターネットという素晴らしいツールの良い可能性を示すために著者たちが行った様々な取り組みと、世の中がまだ色眼鏡で見ている時期も押し付けがましくなく「きっと良い体験をもたらすと思うけど、そうでもなかったら使わなくてもいいんじゃない?」という態度は、読んでいてとても気持ちの良いものでした。ジャイアンがとっても良質な砂場を作って「お前ら楽しそうに遊べよ!」と言ってものび太たちはビクビクするばかりです。雰囲気を醸成することが仕組みづくりの大切なプロセスの一つなのだと改めて感じました。


インターネット (岩波新書)
村井 純
岩波書店
売り上げランキング: 13825