生命保険のカラクリ

本書は生命保険業界の歴史を紐解きながら、経済状況の変化に翻弄されながら顧客を置いてけぼりにしてきた生保の実態を書いている。
まず、前提として著者はライフネット生命の役員である、ということは念頭においておくべき。それを考慮してもかなり客観であろうことを心がけて─というよりは顧客側の立ち位置でというべきか─言葉を紡いでいる印象。その点で誠実に感じる。
十分誠実に書かれているのだがそれでもやはり保険てのはよくわからないものだな、と感じる。

もう一つの生保業界の構造的な問題点は、売り手と買い手との間に存在する、情報の非対称である。

生命保険のカラクリ(文春新書)P227

まさにこれに尽きると思う。山崎元さんも以下のように言及している。筆頭に挙げられている条件だ。

<個人の資金運用で大切な7箇条>
(その1)自分で分からない金融商品は購入しない。
(その2)支出の目的別に運用を考えない。
(その3)「大きく損をした場合」を想定し、備える。
(その4)実質的な手数料率に注意する(最大、年率1%未満!)。
(その5)インカム収入にこだわらない。
(その6)自分の買値にこだわらない。
(その7)商品を購入する相手に運用を相談しない。

金融マーケティングの何に気をつけたらいいか | 山崎元のマルチスコープ | ダイヤモンド・オンライン

自分自身不勉強の折に加入した某大手生保の契約を見なおそうと考えている。一昨日セールスレディーが家に来て見直しの提案を受けた。自分としては

  1. 保険料が高い
  2. 死亡保障が過剰
  3. 商品がわかりにくい

という点が見直しのきっかけだと伝えてあった。彼女なりの最善の回答を持ってきてくれたとは思うのだが「今より安くなる商品に契約を見直すことは会社のシステム上できません。よってとりあえずちょっと高いが1年後に支払い額を下げることができる商品でどうでしょう」と言われた。慈善事業でないのはわかるが「今より安くなる商品に契約を見直すことはできない」とはあまりに顧客の立場から乖離していないかなぁと思うのだがどこの会社もそうだと思うとのことだった。
保証内容については「こんなときにこう助かります、あんなときにこう助かります」と言われると、頭では「そんな確率低いじゃん」と思う一方「もしもの時を考えたら確かに必要かも…」と考えてしまう。逆説的に考えるとこんなときやあんなときに保険に入ってないと生きていくのに相当につらい状況に陥るのだろうか?そうでない世の中が社会保障として整備されていて、それを補うための保険であってほしいのだが。「こんなときやあんなときに公的な保証にはどんなものがありますか?たとえば高額医療制度や遺族年金、生活保護みたいに」と伺ったのだが明確な応えが帰って来なかった。

迷いに迷ってずるずる来てしまっている。どうにかしないとなぁ。

生命保険のカラクリ (文春新書)
岩瀬 大輔
文藝春秋
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