英国王のスピーチ

4/3にミッドランドシネマ名古屋空港で鑑賞。

ひとつの目的をきっかけにして身分を越えた友情を育み試練を克服するふたりとそれを取り巻く人間模様。そんな小さな物語がイギリスのドイツに対する宣戦布告という歴史に織り込まれてくるスケール感。そのあたりがシンプルに描写されていて好感の持てる良作品と感じた。

ジョージ6世コリン・ファース)を「バーディ」と呼び、自身を「ライオネル」と呼ばせることで対等であろうとするライオネル・ローグ (ジェフリー・ラッシュ)。ふたりの関係はメンティー&メンターともバディとも言える。反目 => 相互理解 => 安定 => 別離 => 復縁 => 大団円 というバディムービーには定石ともいえる展開に各々の家族が彩りを加えてくれる。エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)のたおやかで飄々とした立ち居振る舞い、ライオネルの妻(ジェニファー・イーリー)の夫への一言。
特にライオネルとその妻のやりとりのシーンが印象的。右隅に配置された右を向くライオネルがグチをこぼすと画面が切り替わり左隅に配置された左を向く妻が軽くたしなめる。背景は山吹色っぽい壁のみ。背中越しの目と目を合わせぬ会話なれど口調はあくまで穏やかで成熟した関係を感じさせる。


映画のラスト、ドイツへの宣戦布告がクライマックス。その内容について「戦争を宣言するスピーチに際して『王様スピーチ成功やったね』ノリが噴飯物である」という憤りの感想も散見するが、極論すれば本作においては言葉の内容についてはある意味どうでもいい。

面接のボトルネックをコンテンツとデリバリーにわけて考えてみてください。
僕はデリバリーの練習をするのにリハーサルを録音して、抑揚のつけ方とかスピードとかを調整してました。

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「人がスピーチをすること」を「コンテンツとデリバリー」という要素で区別したとしたら、本作はコンテンツではなくデリバリーに重点をおいただけのことであって、それは至極まっとうで誠実。伝える方法に腐心した話なのだ。その意味でも戦争に至るプロセスなどはサラッと描くなど、瑣末なディテールにこだわらずに主題を見事に切り取っていると言えると思う。


ちなみに図らずも映画鑑賞以前に自分がはてなナウにてつぶやいた4文字ワードを以下に記しておく。はてなナウは3文字までなので一部規制してあるのはご容赦を。スピーチの際に言葉につまずいたら心で唱えるといいよ!


余談だけどシチュエーション的に「太陽」でのイッセー尾形演じる昭和天皇を想起した。「太陽」でのイッセー尾形昭和天皇の模写はムニャムニャ感が過剰な感じがしたが本作のコリン・ファースは自然に感じた。これは母国語の違いからくるものかもしれないけれど。ちなみに実際のスピーチはこちらから聞ける。