冷たい熱帯魚

7/18にキノシタホールにて。


叩き起こされる狂気。俺の中のほとんどを構成しているダメ男ちゃんがむくりとしだしてガサガサしてる音が聞こえる。飼い慣らしてるなんてのは完全な思い過ごしだ。直視してないだけだろ?そのこと自体も直視しないで、それで逃げ切ったつもりなのか?その動悸はなんだ?深呼吸すればするほど息が速くなってるんじゃないか?もう、大丈夫だ。お前はちゃんと狂ってる。心配には及ばない。お前は気づいただけだ。お前だけじゃない、ほら、周りのみんなだって、狂気の喚起の瞬間を先延ばししているだけだ。


冒頭から不穏な空気が充満していてずっと息が詰まりっぱなし。観終わったあとの動悸と脱力感といったらなかった。やられっちまった。残虐極まりないのにまた見たくなる中毒性がある。帰ってきてから村田(でんでん)のあの滑舌の悪い調子のいいチャキチャキしたしゃべくりを動画で見まくり。自分はグロ耐性があまりないのだが、これは映画館で見るからこそ良かった。家のちっちゃなディスプレイで見せられたのでは中途半端だ。赤いぐちゃぐちゃした人肉の散乱する風呂場を画面いっぱいに見せられて、返って突き抜けてしまった。
社本(吹越満)と村田の最後のやりとり。村田は社本の弱い点をズバズバと的確に指摘。これには「痛い痛い痛い」と苦悶するしかないよね、俺が。社本もここで覚醒して第二形態へ。吉田(諏訪太朗)が死ぬ際の村田といい「人が豹変するさま」のゾクゾク感というのはたまんないですね。


村田と愛子(黒沢あすか)が「ボデーを透明に」しているあいだに携帯で警察呼べばすぐじゃん、と思わなくもないが、それをさせないだけの説得力が村田の存在にはあった。あの村田に一度睨まれたら中途半端な正義感では太刀打ち出来ない、返り討ちにあうのが関の山だ、と思わせるもの。
そして個人的には、社本の娘・美津子(梶原ひかり)と村田が、自分自身の人生の中で結構深く関わったことのある人たちに顔だったり仕草だったりが似ていたのでかなりゾッとした。


「ボデーを透明にしちまえばいいんだ」
「吉田さーん、元気でなー」
なんてなゾッとする、でもキャッチーな台詞が散りばめられててまさに猛毒エンタテインメントだった。



「人生ってのはなぁ…痛いんだよぉ!」




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