テッド

下品でコミュニケーション上手な非地球人、てことで「宇宙人ポール」を想起。
最後テッド(声:セス・マクファーレン)死ななくてよかったわ。テッドがそこにいてジョン(マーク・ウォルバーグ)がテッドへの依存から離れられたら本当の成長になるのだろうから。

レトリックで笑わせてくれる場面がもっと多いのかと思ったのでその点は拍子抜け。やっぱ日本人向けの文脈を考慮した訳はやはり大変そうだな。やはりそこのところの魅力が割合としては多いと思うのでアメリカ国民じゃないかぎり完全にこの映画の文脈をトレースするのは無理なんじゃないかな。そこに乗れなくても物語は普通に「いい話」なので飽きはしませんね。アクションありカーチェイスありだしw。「ひっこんでな、スーザン・ボイル」は笑った。テッドの動き自体の違和感がまったくないのでその点は素晴らしいと思う。


わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か

自称コミュ障の僕ですが、この本を免罪符に背伸びしないことにします!…というのは曲解も甚だしい訳ですが。
でも、僕はいまから明石家さんまにはなれないし長友佑都にはなれない。

たしかに「コミュニケーション」は人間が社会を形成していく上でとても必要なので重視されるのはしようがないと思うんですよね。ただその能力が欠落している人はそれだからって人間として劣っているわけではない。運が悪いなということなんだと思います。
社会というのは「運が悪い人」に寛容であって欲しいと常々思っているのですが、この本はそのあたりを「コミュニケーション」という切り口から如実に示してくれています。

弱者のコンテクストを理解する能力を持ったリーダーを望む。また、そのような学生を育てたいと強く願う。

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か(講談社現代新書)

世をにぎわす為政者の発言を見ていると「弱者の視点」が希薄だなと思うことが多々あります。弱者の立場を慮ってこその強者だろうと。

そして一方で「しょせん他人同士は分かり合えないものなのだ」というある種の諦観を身につけることが希望の種火になるのではないかと感じます。

人びとはバラバラなままで生きていく。価値観は多様化する。ライフスタイルは様々になる。それは悪いことではないだろう。日本人はこれからどんどんと、バラバラになっていく。

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か(講談社現代新書)

所詮は誰もがわかりあえるわけではないのです。ま、自分のことでさえわからないんですものね。

世界がどんどん平準化してきて出自の違う物事が同じ「系」でくくられる。「複雑系」となったそれが先鋭化していくとやがて破綻する。それは避けたいよねとなると結局「程度」の問題になってきます。
みんながぼちぼちわかり合えないくらいで収まっている方がいいのではないか。わかりあえないことをお互いにわかりあっていればそこに「寛容」が生まれる。
そして「大勢とぼちぼちわかりあえる程度くらいのスキルは身につけておくと生きやすいですよ」と著者は提案してくれる。その程度でいいんだろう。そう思ったらとても気が楽になる。

また、個人ではなくシステムを変える必要性を問うていて、その点も僕と思想的に寄り添うんですよね。

語り口の柔らかさ語り口の柔らかさと実在性のある事象からとても入り込みやすく説得力のあるコミュニケーション論でとても好感しました。

世界は ひとつじゃない
ああ そのまま ばらばらのまま
世界は ひとつになれない
そのまま どこかにいこう

ばらばら(星野源)



ばかのうた
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星野源
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レ・ミゼラブル

多様性を受け入れることの重要性と人生の不条理を感じた。

施しを受けて愛を知りジャン・バルジャンヒュー・ジャックマン)は人生を肯定し、"悪人"に情けをかけられ借りを作ったジャベール(ラッセル・クロウ)は人生に絶望した。自らの信念を180度覆されたジャベールの絶望はいかばかりか。
また若者たちの未熟な蜂起も"確固たる信念"のもと、結局は何も残さずに無残に散ってしまっている。「命を粗末にするな」と諭されても「命をかけて散る」と一蹴し、まさに命を落とす。果たして正しい判断だったのか?
外部からの影響やそれに伴う変化を受け入れないことが結果的には悲劇的な結末を生みだしている。

そして、エポニーヌ(サマンサ・バークス)の人生のなんと切ないことか。幼稚な夫婦に育てられ、自らの恋は成就せず、しかし愛する人に抱かれて、息を引き取る。「雨は花を育てる」と希望を口にして。

過ちをおかなさい人間もいなければ完璧な人生もない。それを誰もが認めて生きていくことができたらいいのに。だからバルジャンはコゼット(アマンダ・セイフライド)には「優しい嘘」をついてもよかったのではないかな。あの手紙の内容はきっと事実がしたためられているのだろうけど。

レ・ミゼラブルについて何も知らなかったんだけど登場人物たちが心情を歌いあげてくれるので非常にわかり易かった。ほぼ全セリフに節がついていてそれには若干違和感があったけど。冒頭から涙腺緩みっぱなしで、トレーラー効果もあろうがファンテーヌ(アン・ハサウェイ)の「夢やぶれて」はかなりグッときた。

嗚呼、やさしくなりたい。



レ・ミゼラブル~サウンドトラック
サントラ ラッセル・クロウ エディ・レッドメイン アマンダ・セイフライド サマンサ・バークス ヒュー・ジャックマン アン・ハサウェイ イザベル・アレン サシャ・バロン・コーエン アーロン・トヴェイト ダニエル・ハトルストーン
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アルゴ

フィルムっぽいザラッとした感じの映像が良い。あとキャストが実在のモデルにそっくりなのな。笑った。タバコ吸いすぎ。見てると吸いたくなるような食傷気味になるような。
レスター・シーゲル(アラン・アーキン)とジョン・チャンバーズ(ジョン・グッドマン)の存在がいいね。好々爺たちがキャフキャフしながら一生懸命ふざけてる感じがいい。
なにもかもがいい感じにギリギリすぎるのとトニー・メンデス(ベン・アフレック)がアメリカに無事戻ってから別居していた妻のもとに帰るんだけどその動機づけが正直わかんないとこは気になった。

命令に背いて作戦を決行した主人公 トニー・メンデスの判断やマーク・リジェク(クリストファー・デナム)の空港でのペルシア語での対応など、システムの想定しない範囲でのプレイヤーの自己判断による状況対応が奇跡を呼ぶ。かなりうまくいく過ぎではあるけど(笑)
ハードも大事だけどやっぱソフトも大事ということか。ソフトを育てるシステムつまり教育というのが重要だよね。で、その教育制度を作るのは人間 (= ソフト)であって…。属人性が関与する部分の多寡っていうのはいつも興味のあるところ。

ま、ひとつ言えるのは分かりやすいワードがあるとプロジェクトって推進しやすいんだよね。なので賞賛の意味を込めて、、、

Fuckin' ARGO!


夢売るふたり

松たか子の「熱演」ですね。話が散漫としててせかせかした印象を持ちました。リアリティラインが微妙でそこが気になって乗れない時があったかな。火事になったらまずは消火器じゃね?とか子供がちょっと遊んだくらいではあんなに深く刺せないんじゃない?とかほかにも。
印象的なのはひとみ(江原由夏)のシーケンス。一番観てて痛かった。出ていく貫也(阿部サダヲ)を引き止められずにうなだれるシーンは胸が痛すぎた。あと紀代(安藤玉恵)の「誰に幸せにしてほしいって言った? 私は今が幸せだよ。ちゃんと自分の足で立ってるもん」て感じのセリフにこの映画の主題があったように思う。
自分の人生は他人に委ねちゃいけないんだな。他人に委ねちゃった時点でみんな坂道を転げ落ちていくんだ。他人に委ねると良い時は依存するし悪い時は責任転嫁できる。
でも、人は人と寄り添っていかなきゃいけないよね?その距離感ってのがほんとに難しいんだな。

ちなみに猫背椿が出てくるとどうしても笑ってしまう。

桐島、部活やめるってよ

いやぁ、おもしろかった。
繰り返される金曜日。縦糸横糸色とりどりの糸が織り込まれていきながら物語が編み出される感じがよかった。興味をずっと持続できました。
持つものも持たざるものも当人たちなりに同調圧力ヒエラルキーの上下やなんやかやに巻き込まれ煩悶している様が濃淡の差はあれどおしなべて描かれていて愛が感じられた。そして持つものも持たざるものもみんな観ている自分の中にある要素を露見させるので、自分が許されているような気になる。

「謝れよ!俺達に謝れよ!」なんて言える前田(神木隆之介)は強いよ。とても強い。映画監督になれるなんて甘い夢は見てなくて、でも今やっていることが素敵な幻想と地続きなんじゃないかっていう希望を持って信念のもとにやっている。
自分の信念を決められるってことはとても運がいい。
この物語に僕の分身はいなかったけど
「戦おう、僕達はこの世界で生きていかなければならないのだから。」
結局僕らはこの世界で生きていくしかないんだな。そしてその世界は自分で規定することができる。
「だから結局、出来る奴は何でも出来るし、出来ない奴は何にも出来ないってだけの話だろ。」
「お前それは持ってる奴が言うことだぜ」
戦える強さがある人間ばかりじゃない。
「なんとかしようとしてこの程度なんだよ!」
もがいている様さえ美しいのは若さのせいかな?

エンドロールで自分の通っていた高校の名前が出てきて「(・・?)」と思ったのですが原作の朝井リョウさんが同じ高校出身でした。そんなちょっとしたことでも「これは俺の映画だ」感が出てきますね。

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
朝井 リョウ
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最強のふたり

ほんわか映画。人生って素晴らしいんだね。

「良いシーン」の多い映画だなと思った。音楽の使い方が気持ちいい。そして人は本能的に踊りたくなる生き物なんだなと認識させられる。クラシックに対するスタンスも共感できた。ドリス(オマール・シー)の常用してるモンスター・ケーブルのドクター・ドレーモデルいいなー。
笑えるシーンもよかった。オペラの「木」のくだりなんか絶妙。下品でなくて押し付けても来ない感じがしっくりきた。
ちゃんとすべての伏線を回収していたのでそのあたりも腹に落ちた。どうやって卵を見つけ出したのかは謎だけど。
あと、パラグライダーのシーンは爽快。まわりの景色と二人の表情は言葉なしでも感動的なシーンだった。
ドリスとイヴォンヌ(アンヌ・ル・ニ)との関係性に好感。個人的にはドリスがやめる時のイヴォンヌとのハグシーンが一番ぐっときた。

オープニングの荒い運転は明らかに人に迷惑をかけているのでその点はのれなかった。冒頭からこの気持ちがずっと残ったままだった。また、誠実にこなそうとするドリス以外のヘルパーたちがまったくの無能に感じてしまいちょっとかわいそう。結局は「頭のいいひと同士の幸運なお話」なのだなと感じてしまった。まぁ実話ベースなのでぐうの音も出ないが。
しかし実話を基にしているとはいえ「ご本人登場」は不要だったな。


なお、隣のカップルがイチャイチャしててブツブツ喋ってて映画に集中できませんでした。あと、セント・オブ・ウーマンを思い出した。

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